シリコンフォトニクスとは:なぜ5Gの実装に不可欠なのか

フォトニクスは光の科学と応用に関する研究分野で、シリコンフォトニクスはその中でもシリコンを主な対象にするものです。近年、半導体プロセス技術の劇的な向上によって十分な光学特性が得られるようになったことと、シリコンを素材としたさまざまな光学的な機能が実現されたことにより、飛躍的に発展している領域です。

シリコンフォトニクスの主な利点

シリコンフォトニクスの重要な点は、CMOSプロセスのような経済性に優れた製造技術と、光通信が持っている本来的な利点―高速伝送、広帯域、省電力―とを結びつけることにあります。従来から、電気信号の伝送では伝送速度、帯域が強く制限され、高速通信を実現するためにはエネルギー効率を犠牲にしなければなりませんでした。一方で、従来のオプトエレクトロニクスのデバイスは、前述した特性を容易に実現できることはわかっていたものの、実現のためには気密封止された筐体の中で、一つ一つの素子を人間の手で立体的に組み上げる必要がありました。シリコンフォトニクスでは、この電気的な機能と光学的な機能を一つのチップに統合して実現することが可能になります。

同時に、素子を手動で組み上げる必要がなくなることで、シリコンフォトニクスのデバイスはこれまでと同じ機能のものをよりコンパクトに実現することができ、より大量生産に適していて、ほかの電子部品と同じような「パッケージング」をできるようになります。

シリコンフォトニクスはWDMにも適用することができ、同じ体積で、1本のファイバで利用できる波長チャンネル数を大幅に増やした光コンポーネントを構成することができます。

このことは、シリコンフォトニクスを利用することにより、高速、広帯域、低遅延なインターコネクションを、より小型で、消費電力も小さく、それでいてスケールメリットとコストはこれまでの集積回路を用いる電気信号による通信に近い形のコンポーネントで実現することを意味しています。これらの利点は次世代のデータセンタやHPC(高性能計算機)にとってだけでなく、次世代モバイル通信―5Gでも有用です。

シリコンフォトニクスと5G

第5世代無線通信技術は、ユビキタス社会のインフラとして、社会と産業に革命を起こすものとして期待されています。5Gの主要なドライブフォースは成長著しいモバイル通信市場ですが、それにとどまらず、AR(拡張現実)、インダストリー4.0、M2Mの通信(トラフィック)といったものも後押ししています。

5Gのアクセス系は、消費電力を抑えながら、平均して現在の10倍以上、ピーク時には1000倍以上に達するトラフィックに対応することが求められます。これだけでなく、5Gのシステムは非常に小さな遅延、あらたな周波数帯、ビーム形成技術、キャリアアグリゲーションといった、とくに時間領域についての条件が厳しいサービスをホストすることになるでしょう。同時に、アプリケーションのトランスポートネットワークは、ネットワークに接続された多数のユーザーと装置によって発生するパケットと、新たに生まれるであろうアプリケーションからの要求に耐えられるだけの容量を持たなければならないでしょう。しかも、これらすべての要求は柔軟性と経済性に富み、持続可能な方法で達成されなくてはならないのです。

 こういった要求を実現するために、モバイルアクセスネットワーク(Radio Access Network、略してRAN)の変革が必要でしょうし、それはとりもなおさずそのバックボーンたるトランスポートネットワークを見直すことに等しいのです。

光通信は、これらの要求を満たす候補のひとつたりえるでしょう。ですが、ディスクリートなコンポーネントや、コア・メトロネットワークで用いられているような、従来的な通信技術は、これから求められている低コスト、省エネルギー、小型化といった要求、さらにはRANのようなところで利用するのに、パフォーマンスは十分とは言えません。一方、フォトニクス、ことにシリコンフォトニクスはこれらの要求を満たす理想的な候補です。コストに優れたCMOSプロセスやパッケージ技術と、光通信が持つ高速、低遅延、広帯域といった特徴を兼ね備えるシリコンフォトニクスこそが、要求すべてを満たすことができる唯一無二の選択肢たりえるのです。

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